東海地区感染制御研究会について
東海地区感染制御研究会代表

奥平 正美(Masami Okudaira)
安城更生病院 薬剤部

 東海地区感染制御研究会発足と主旨について
 近年、感染症領域における薬剤師の果たすべき役割の重要性は高まりつつあり、感染制御認に対応できる薬剤師への期待とその参画が求められています。平成18年1月には、日本病院薬剤師会では感染制御専門薬剤師制度そして認定薬剤師制度が開始され、また平成20年には日本化学療法学会においても日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師制度が制定されています。
 このような専門薬剤師をめざす薬剤師や感染制御に従事する薬剤師のために、感染対策・感染制御に関する講演会の実施や各施設との情報交換、そして共同研究など東海地区における地域連携(感染ネットワーク)を展開することを目的として、平成18年7月に東海地区感染制御研究会(以下、研究会)を発足しました。 研究会の立ち上げから森 健先生(愛知医科大学病院感染制御部客員教授)のご尽力により、三鴨廣繁先生(愛知医科大学大学院医学研究科 臨床感染症学 主任教授)の力強いご支援を拝受しています。
 研究会世話人について
 研究会における世話人は、日本病院薬剤師会感染制御認定・専門薬剤師または日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師のいずれかを取得している薬剤師で構成されています。初代の研究会代表は滝 久司先生(現 静岡医療センター)、次に片山歳也先生(現 四日市羽津医療センター)がされ、現在は小生が代表を引き継させていただくこととなりました。そして、副代表は愛知県:中根茂喜先生(中京病院)、岐阜県:丹羽 隆先生(岐阜大学医学部附属病院)、三重県:木村匡男先生(鈴鹿回生病院)、静岡県:望月敬浩先生(静岡がんセンター)がされ、さらに世話人は各県病院薬剤師会において、感染領域のスペシャリストの先生方により構成されています。
 研究会開催内容について
 研究会は抗菌薬セミナーベーシックコースおよびアドバンストコース、学術講演会により構成されています。抗菌薬セミナー開催時には、山岸由佳先生(愛知医科大学病院感染症科/感染制御部 教授)より、感染制御において薬剤師が知っておきたい診断・検査・画像などに関する講義を頂き、参加者から好評を得ています。また、抗菌薬セミナーにおける症例検討では、SGD(small group discussion)形式を採用し、日々の感染業務にて直面する具体的な症例について薬剤師だけの積極的な討論・議論を行った後、感染専門医を交えて討論しています。このSGDにより、薬剤師の感染制御に関わる思考的プロセスを向上させ、さらには自施設では経験の出来ない臨床症例について学ぶことができる機会となっています。SGDとは、集団力学を利用した相乗的効果が期待される学習法とされており、特定の演題を一定のメソッドに沿って進めていくことで学習課題に対する習得が講義を通してより、討論形式のほうが効率がよいという仮説に基づき,「構えずおごらず,知らないことを学び,知っていることを伝える」といった3原則を念頭におき、参加者の無条件の肯定的配慮、共感的理解と言った施設背景までを理解した上で議論を進めています。
 研究会のSGDの特徴は、日本病院薬剤師会感染制御認定・専門薬剤師または抗菌化学療法認定薬剤師を中心としたSGD討議者を構成し、デモンストレーション形式として聴講者に拝聴していただいています。SGD討議者のコメントに対し、三鴨廣繁先生および山岸由佳先生からのご意見はSGD討議者のみならず、聴講者にとって貴重な知識となり、必見すべき内容が豊富に含まれていると思います。薬剤師のみの議論に終始せず、医師の立場から議論に加わって頂く症例検討では、薬剤師と医師の専門領域における高いレベルの融合も目指していきたいと考えます。本邦における感染症専門医の数は少なく、すべての薬剤師がこのような専門医の目線や考え方を学ぶ機会はけして多くありません。そのため、研究会では抗菌薬セミナーを愛知県・岐阜県・三重県・静岡県の各県で開催しており、数多くの薬剤師の勉強となる機会を設定していますので、ぜひご参加いただけますようお願い申し上げます。
 抗菌薬セミナーベーシックコースでは知っておきたい感染症の2疾患(肺炎、皮膚軟部組織感染症)について,薬剤師歴5年未満の先生方を中心にSGD形式でじっくりと討論する時間を設けています。各班のファシリテーターは本研究会の世話人(認定または専門薬剤師)が各討論を誘導し、かつ支援しています。
 研究実績について
 東海地区における多施設共同の抗菌薬使用量調査を行い、日本環境感染学会誌に論文投稿を行い掲載された実績があります。(梅村拓巳, 望月敬浩, 村木優一, 片山歳也, 滝 久司, 大曲 貴夫, 山岸由佳, 三鴨廣繁, 森 健.東海地区におけるATC/DDD systemを利用した注射用抗菌薬の使用量調査と緑膿菌耐性率. 環境感染.25, 376-382(2010).)。これらの研究を実施するにあたり、抗菌薬使用量については、従来は、バイアル数やグラム数で算出している報告が多かったが、近年、WHO(世界保健機構)が推奨するATC/DDD (Anatomical Therapeutic Chemical classification system)を用いて抗菌薬使用密度(AUD:antimicrobial usage density)を算出する手法を用いた報告が増えています。しかし、本邦にしか市販されていない抗菌薬の存在しており、これらの抗菌薬のDDDは規定されていないため、算出に問題が生じます。研究会の副代表望月敬浩先生らが中心となり、新たにDDDが必要な抗菌薬についてWHOに申請して、DDDを付与された実績があります。ようやく本邦において、汎用抗菌薬のDDDが揃いATC/DDDに基づき、抗菌薬使用量を算出することが可能になりました。また、先般、日本病院薬剤師会学術委員会学術第8小委員会により、全国規模の抗菌薬使用量調査を実施されました。この結果については、特別会員である村木優一先生(現 京都薬科大学)が中心となって結果をまとめられ、海外雑誌に投稿され受理されました。
 日本人患者におけるMeropenemの高用量投与の安全性および有効性に関する多施設共同後方視的研究について、研究会世話人の施設を対象に行い、特別会員である浜田幸宏先生(現 東京女子医科大学病院)が中心となってまとめられました。

薬剤師としての感染制御への今後の期待と課題
 今後、日本病院薬剤師会感染制御認定・専門薬剤師または抗菌化学療法認定薬剤師が感染症に対して積極的に関与していくことは、抗菌薬の適正使用をはじめ耐性菌の未然防止など治療効果に大きな影響を与えるものと考えられます。研究会の活動がその一助となり、日本病院薬剤師会感染制御認定・専門薬剤師または抗菌化学療法認定薬剤師の新たな輩出や認定単位更新に貢献できればと考えます。さらに最近では,抗菌薬の適正使用推進のための取り組みとしてantimicrobialstewardship(AMS)という言葉があります。これは、抗菌薬の適正使用を推進し、耐性菌の出現防止や治療効果を高めることを目標とする手法として「抗菌薬の使用制限」と「介入とフィードバック」が抗菌薬適正使用を推進する2大戦略があります。各医療機関や地域における感染制御の対策において、東海地区の施設の先生方と切磋琢磨し,努力していきたいと考えています。





東海地区感染制御研究会世話人名簿(2019年4月)

青山 智 岐阜市民病院 岐阜
池田 義明 金城学院大学薬学部 愛知
稲垣 孝行 名古屋大学医学部附属病院 愛知
上田 秀親 高山赤十字病院 岐阜
榎屋 友幸 三重大学医学部附属病院 三重
代表 奥平 正美 安城更生病院 愛知
片山 歳也 四日市羽津医療センター 三重
副代表 会計 木村 匡男 鈴鹿回生病院 三重
小林 義和 公立西知多総合病院 愛知
塩田 有史 愛知医科大学病院 愛知
滝  久司 静岡医療センター 静岡
副代表 中根 茂喜 中京病院 愛知
副代表 丹羽 隆 岐阜大学医学部附属病院 岐阜
萩原 真生 愛知医科大学病院 愛知
平下 智之 岐阜県総合医療センター 岐阜
本田 勝亮 聖隷浜松病院 静岡
松岡 知子 大垣市民病院 岐阜
副代表 望月 敬浩 静岡県立静岡がんセンター 静岡
会計監査 森 章哉 松坂中央総合病院 三重
顧問 森 健 愛知医科大学病院 愛知
三鴨 廣繁 愛知医科大学病院 愛知
山岸 由佳 愛知医科大学病院 愛知
(順不同)